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2015-08-02

伊東豊雄インタビュー-4

社会への回路
――最近、若い建築家についていろいろと発言をされていますが、非常に洗練された建築をつくる人たちがいて、洗練に洗練を重ねているというようなところもある。でもそのときに身体とか知覚へのアプローチというのがどうも抜け落ちているんじゃないかという感じもしています。

伊東 おっしゃる通りで、僕はそれに対してはかなり批判的で、自分も日本でやるとどうしても施工技術が高いからついついその技術を使ってソフィスティケーションの世界に入ってしまうのですが、自分ではそれに対してかなり自覚をしているつもりです。しかし、若い人はその自覚があるのかな。そのことだけをたよりにして建築をつくって、そこで満足をしていると、あまり先行きないような気がしますね。ですから少し海外に出て建築をつくってみるのはすごくいいのではないかと思います。そこで、建築ってなかなかつくるのたいへんだなとか、技術のないところでも耐えられる建築はどんな建築だろうとか、考えてみた方がいいように思いますね。

――一方で、平田晃久さんとか乾久美子さんとか若い人でもそのことに気づいている人たちがいて、いろいろな試みがなされていると思いますが。

伊東 ものすごく優秀な人たちが出てきていると思いますね。平田さんもそうですし、乾さんも藤本壮介さんも、そういうことに十分自覚的なんだけれども、それでもまだ抽象的な気がしますね。

いま、東北で《みんなの家》をつくろうというキャンぺーンを張っていて、帰心の会でやってるのですが、まずその第1号が仙台の宮城野区でもう間もなくできあがります。それは本当に当り前の木造の切妻の小屋をつくりました。それは僕がほとんどデザインをしたのですが、そのあと、藤本さんや平田さんたちと、みんなの家ってどういうものなんだろう、ということを徹底的に議論しようと思っています。被災をして、しかも高齢者ばかりで、寒冷地だし、そういうところで今までのような、ソフィスティケイトされた住宅をつくっても東北の人にはその意味がくみ取られないし、喜ばれもしないだろう、その時僕らはどうするんだ? これから日本を背負っていくような優秀な人たちと、これからの建築がどうあるべきかという議論をしてみたいなと思っているところです。

――いまのお話ともつながると思いますが、建築家がある時期から都市への思考から撤退したときに、伊東さんは住宅レベルであっても社会への批評をこめるということで社会との回路を担保されていましたが、いまその社会への回路はどういうかたちで持とうとされていますか。

伊東 住宅で行ってきた批評精神をこんどは公共のほうへと移行させて公共建築でそれを継承してきたのですね。公共の建築には、今の官僚制度がそのまま建築に乗り移っているようなところがあって、変えていかなくてはならないことが多々あるように感じています。本当にそれを利用する人が快適と思ったり、動物的な感受性を発揮できるような建築へと解放していくためには、そこでかなりやり合わないといけないと思っています。ただ今回の震災以後、被災地で現地の人たちとも話をしていて、もう一歩プリミティヴなところに戻って、自然との関係を考えながら建築を再考しなくてはならないし、今回の被災地は都市とは必ずしも呼べるようなエリアではないかもしれないけれども、そういうエリアをどう復興していったらいいかについても提案していきたいと思っています。

伊東建築塾
――今までお話をうかがってきたような伊東さんのアプローチですと、教育と自然と結びつく部分が大きいと思います。冒頭でお話の出た伊東建築塾でも活動されていて、この塾には土曜講座と建築家養成講座と子ども建築塾があるわけですが、始められてみていかがですか。

伊東 始める直前に震災があったものですから、いちばんメインにしようと思っていた建築家養成講座では、塾生全員でいま釜石の復興計画を考えているのです。6月ぐらいから始まって前期は終わったので、後半どうするかを今夜実は話し合いを開始するところです。釜石にいきなり連れて行かれてみんなかなり戸惑いもあったようなんですけれども、非常にインパクトは強かったようで、この前話していたら、何らかのかたちでこの1年間、釜石に関わっていきたいと言っていました。本当は建築って何だろうとか、建築ってどうやってつくっていくんだろうとか、もっと初歩的なことから考えなおそうと思っていたのですが。

――土曜講座では中沢新一さんに講師を依頼されたようですが、これはやられてみていかがでしたか。

伊東 「建築の大転換」というテーマで2回お話いただきました。1回目の大半は原発の話で、『日本の大転換』という本にも書かれているような内容でとても面白かったんですが、若い人がもうひとつピンと来てないような感じがあって(笑)。僕はもうビンビン来たんですけれど、そこがちょっと物足りなかったですね。

――中沢さんに来ていただいてドカンと触発して若い人の眼を開いてもらうというのが伊東さんのいちばんの目的ではなかったのかと推察しますが。

伊東 いかに自然との良好な関係をつくりながら新しい建築をつくり得るかという問題の前提みたいなところですからね……。

――今のお話だと、触発にはちょっと時間がかかりそうですね。

伊東 そうなんですよ。しかし、優秀な人たちもたくさんいるので、すこしずつ変わっていくことを期待しています。

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